ベイベ

今日は最後の体育だった。何の感動もなかった。最後なのに何の感動もしないというのはなかなかハイレベルな印象の残らなさだろう。そんなことをかんがえていたらふと高校の頃の先生を思い出した。


俺は私立高校の進学クラス(笑)にいたので、三年間メンバーと担任が同じになるクラスにいた。実際三年間クラスのメンバーはほぼ代わらなかったが、担任の先生は三年になったとき代わってしまった。今日はその1、2年の時の俺の担任であったS先生との別れの時の話をしよう。記憶が弱冠あやふやなので間違っていても突っ込まないでほしい。(長文注意!!



まずS先生とはどのような先生だったのか話しておこう。S先生はだいたい30代前半くらいの女性の英語の教師だった。とにかく厳しく、1年生の時から課題やテストなど出しまくってきて、普段の生活などでもうるさく言ってくるようなことがたまにあった。その厳しさから「ファッキンクレーター女!ビーッチ!!ベイベ」などと陰口を叩くものもいたが(ていうか俺)、面倒見のよさをしたって彼女の事を好いてるクラスメイトも多くいた。


進学クラスにもかかわらずモチベーションの低かった俺達を、尻を叩いてよく引っ張ってここまでまともにしてくれたと思う。また勉強以外の文化祭や体育祭等のイベントでも、彼女は俺たちのクラスに大変大きな影響を与えてくれた。何事にも消極的であったクラスであった俺のクラスが、文化祭で賞を受賞することが出来たのは、彼女の叱咤や励ましがあったからこそだろう。


今考えてみると、彼女からは勉強に関すること、勉強以外のこと、様々なことに関して恩恵を受けており、感謝してもしたりない。だが当時の俺は若く、そんな彼女によって自分に与えられているものは見ようとせず、彼女の厳しさばかりに眼をむけ「オイまた再テストかよファーック。滅しろあのクソおばさんベイベ」などと悪口を叩きつづけていた。




そんな彼女の口から学校を去るという言葉が出たのは、二年生も終わりに近づいていた3月の始めだった。 やはり飄々としていた彼女であったが、進学クラスの担任というプレッシャーは彼女を確実に蝕んでいったのだった。


その日俺のクラスは、TOEICの試験を受けていた。これは学校のプログラムで、TOEICの講座を1週間程度受けた後、最終日に本物(といっても準公式のものだが)を受けてみるというもので、その日はちょうど最終日であったのだった。当然俺は「かったりいし眠いぜチェケラ。統計的戦略における心理学的確率事象最高期待値戦略にかけるぜベイベ」と途中から全部Cにマークして寝てしまった。


そのまま気づいたら試験が終わっていて、休み時間に入った。友達とケツキック(ジャンケンで負けたほうがケツにキックを食らうというあそび。室町時代から続く由緒正しい遊びで、尻蹴寺(こうしゅうじ)の壁にはケツキックで戯れる農民達の姿が描かれているとか何とか。)をしようと友達を誘おうとしたら、s先生から呼び出しを食らった。


しぶしぶながらs先生のところに行ったら、やはり危惧していた通り、統計的戦略における心理学的確率事象最高期待値戦略のことで怒られた。しかし彼女はいつもとは何か様子が違っていた。。やたら「最後なんだから」といったニュアンスのことを強調していたのだ。何かその姿からは哀愁すら読み取れた記憶がある。ここで何か気づいておくべきだったのかもしれない。


しかし当時の俺にそんなもの察せる訳がなかった。その後普通にケツキックをして戯れていたら、あっという間に帰りのホームルームになった。余談だが、200年後、俺の母校の体育館の壁には、ケツキックをして戯れる俺たちの姿が描かれているかもしれない。(?)


帰りのホームルームの時間となり、クラス皆が席に着き、先生の到着をまった。この後に、悲しい知らせが彼女から告げられることを知っていた者はまだ誰一人としていなかった。今思うと、この時に間抜け面して彼女の到着を待っていたことがとても悔やまれる。


皆がそろって彼女を待ちはじめてから5、6分後くらいであろうか。彼女が教室に入ってきた。入室した時の彼女はいつもの変わらない様子だった。そして彼女が教卓に立ち、号令がかかった。いつものホームルームのルーティンワークが次々と消化されていく。その数分後彼女の話となった。


彼女は入室時と同様に普段と変わらない様子で話し始めた。俺は先刻彼女に怒られたこともあって「早く終れよファーックいつも話長いんだよ。never ending story ベイベ」など心の中で悪態を付いていた。やはり例によってこの時も彼女の話は長かった。


しかし彼女が連絡事項を伝え終わった後くらいだったろうか。彼女の話が、なにやら思い出話や彼女自身の話に代わったようだった。「おいおい・・・。今するべき話じゃないだろベイビーボーイ」などと皆が思ったことだろう。souljaもこの場にいたら思ったことだろう。しかしおかしい。話が進むにつれ彼女の表情が真剣になっていく。いつもはこんな表情はしない。これは確実に何かがある。そう思った。さすがにこのときばかりは俺も話に聞き入っていた。


教室中の空気が張り詰めていく中で彼女は次々と言葉を紡いでいく。皆がその話の先にある何かを求め彼女に懸命に視線を注ぐ。




「私はこの学校を去ることになりました。」


そしてついに彼女はその言葉を言った。


え・・・嘘・・・・・・だろ・・・・・・?

バラバラだったクラスだったが、このときばかりは皆の心がひとつになったような気がした。「大事なものは失ってから気づく」そんなありきたりな言葉が今さら浮かんできた。驚愕、後悔、自責、あらゆる負の感情が俺の心になだれ込んできた。


「何で今日ちゃんとテスト受けなかったんだ・・・」

「今まで悪口ばっかいってごめんなさい・・・」

「うそだろ・・・・・・嘘って言ってくれよ・・・!」

「引っ越ーしー」

「こんな急になんでだよ・・・」

「うわああああごめんなさいごめんなさい・・・」


さまざまな負の感情の中でひとつ異質なものがあった。そうmiyoco(引越しおばさん)だ。当時話題になっていた引越しおばさんのことをふと思い出してしまったのだ。今でこそほとんど話題に出ることのない引越しおばさんだが、当時はそのまねひとつで5人は倒せるといわれていたくらいの攻撃力を持っていた。(笑的な意味で)


引っ越ーし!

引っ越ーし!

さっさーと引っ越ーし!


そんな最盛期を誇るmiyocoが俺の心の中で加速度的にその攻撃力を増していく。

まずい・・・このままではこの神聖な空気の中で笑ってしまうという、今後クラス生活を営んでいく上で絶対にやってはならない禁忌を侵してしまう・・・!絶対に笑ってはならない・・・!笑ったら確実にクラス内制裁を受けることになってしまう・・・!もう完全に別れの悲しみなど俺の中では消え去っていた。いかに笑わずにこの場を乗り切るか・・・俺の真の戦いが始まった。


まずは状況を正確に把握しなくてはならない。周囲を見渡してみた。

女子のほとんどが泣いていた。まずい・・・。この厳正な空気は俺にとっては笑いの格好のスパイスだ・・・。

そう・・・普段ならmiyocoなど頭の中でリフレインしても笑うことなどほとんどないのだが、この別れの空気ではフィールド効果でmiyocoの攻撃力は1,5倍に跳ね上がる。


しかし周囲どこを見渡してみてもとても笑えるような空気ではない。

引っ越ーし!

引っ越ーし!

さっさーと引っ越ーし!

そんな俺の状況などかまいもせず、miyocoのボルテージは上がっていく。もう俺は限界だった。



志半ばで投げ出してしまう自分の未熟さを必死にわびるs先生。

その先生の姿に心を打たれ別れを惜しみ涙を流すクラスメート達。

miyocoの襲撃におびえる俺。



なんという格差社会であろうか。死ぬわけにはいかない・・・。死ぬわけにはいかない・・・。俺は必死に全神経を集中してmiyocoの攻撃を迎え撃った。


はじめ俺は「なるべくこのことを考えないようにする」という戦略をとった。しかしそんな俺の考えをあざ笑うかのようにmiyocoは俺になんどもボディーブローを叩き込んできた。気にすまいとするほど人間は気にしてしまうものなのだ。何度も笑う寸前まで行って俺は別の戦略に移った。


では次に俺はなにをしたのか・・・それは「別のことを考える」だった。これなら過度にmiyocoのみに思考が回ることはない。我ながら名案だと思った。さっそく俺は当時かなりリスペクトしていたMr.Childrenの桜井さんを必死に思い浮かべた。かっこよかった。結果としてこの作戦は当たりだった。さすが桜井さん。かなりmiyocoを押さえ込んでくれた。笑いの波は超えた。もう大丈夫。そして俺は油断した。その瞬間俺の頭の中で遊戯がニヤリと笑った。

遊戯「トラップカード発動!!」そんな声が聞こえた気がした。


ミスチルだけでなく、調子に乗ってm-floのことまで考えていたら、なんと俺の頭の中でmiyocoとm-floが手を組んだのだった。

まさかのm-flo loves miyoco・・・っ!?こ・・・こいつら・・・・・・っ!?

頭の中にmiyocoとm-floのマッシュアップがかかる。

引っ越ーし!イェー

引っ越ーし!イェー

さっさと引っ越ーし!come on!

in my headで軽快に流れるごきげんなナンバー。その破壊力は今までの比ではなかった。俺に致命傷を与えるのに十分な威力だった。

---ブフッ


すすり泣きの響く教室に一人の男の醜い噴出し笑いが轟いた。


俺は瞬間的に頭をフル稼働した。ごまかせ!!ごまかせ!!なんとかごまかすんだ!!なんどもこのくらいのピンチ乗り越えてきただろう!!いけるいける!!何でそこであきらめるんだそこで!!頑張れ!!頑張れ!!もっと熱くなれよおおおおおおおおおおおおお!!そして俺の頭脳は0.01秒で回答をはじき出した。

即座に俺は鼻をすすった。そして「うう・・・」と嗚咽を漏らした。そう・・・泣きまねをしたのだ。この機転が功を奏し誰も俺の敗北に気づくことはなかった。


その後も何度もmiyocoに敗北を喫した俺だったが、新技「鳴きまね」を駆使しmiyocoの攻撃をかろうじて防いで行った。


そして何度噴出した後であっただろうか。先生の話は終わりを告げた。俺の長い戦いが終結した。すがすがしい気分だった。「これほど生死をかけて必死に何かに打ち込むことなどこの先ないだろう。とてもいい体験をした。」そんな気持ちでいっぱいだった。


ふと窓から光が射した。つられて空を見上げた。その眼には何が移っていたのだろうか。今は覚えていない。きっともうあの頃の輝きを失ってしまった今の俺には映ることのないものだったのだろう。






今日は頑張った。途切れることのない愛(投票)を信じてるぜベイベ


ちなみにs先生はご両親の病気のために辞職すると我々教え子におっしゃっていましたが、最新の調査によると実は仲の良い先生がやめてしまったから「私もやーめた」ってやめたっていうのが本当のところらしいです。

ファーック!!ベイベ

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